第一章 ザルバリアの現実

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「それは、眠っている間もですか?」 『変わりなく、常にだ。証拠を言おう。我輩は五十年前に一度目覚めて、それからそなたが現れるまで眠っていた。しかし、二年前にザルバリアとミシュミランの間で戦争が勃発したことを知っているぞ』  資源戦争の事だな、と歴史を知るアリアは確信した。二年前に砂漠の国“ミシュミラン”が、ザルバリアの奥地に眠る資源を求めて軍を差し向けたのがきっかけで全面戦争に発展。双方の死者数は、非戦闘員を含めると数百万人に及んだと聞く。  アリアは戦争に参加しなかった。  厳密に言うのなら、参加できなかったのだ。アリアの母親が死に物狂いで止めたからである。 『しかし、人間とは変わらぬな。いつの世も戦争は無くならん。イエス・キリストは隣人を愛せと言ったが、別にキリスト教徒が必ずしも隣人を愛していたとは限らぬしな』 「キリスト教?」  聞いたことの無い宗教だ。 『ああ、そなたは知らぬのか。キリスト教とは零世界の時の世界宗教だ。世界で最も普及し、クリスマスという行事が世界規模で行われたほどでもある』 「それはまた、凄いですね」 『いつの世も戦争と宗教は無くならないとは、レスベルの言葉だが、いやはや改めて実感させられる』 「レスベルが、そのようなことを……」  伝説上の人物であるレスベルとも関わっていたのか、このぬいぐるみは。  あまりの驚愕の連続に、もう驚くことも出来なかった。 『人間の最大の過ちは、宗教を創ったことだとも言っていたな』
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