第一章 ザルバリアの現実

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「それは……」  アリアも思ったことがある。宗教の対立から火種が生まれ、それが爆発的に炎上することで取り返しの着かない部分で溝が生じる。  戦争の根本。  魔法が再び使えるようになってから戦争は増加の一途を辿っている。それでも、猟兵団が増えた現在はその対処に各国は追われて、他国と戦争する余裕が無くなっているらしいけれど。  そういう意味では、猟兵団も世界平和に貢献しているのかもしれない。  ――猟兵団の存在を承認するわけではありませんが……。  全く不価値というわけでも無かったりする。歯痒いけれど、事実ではある。 『我輩には直接関係無いがな、そなたには大いに関係あろう?』 「……戦争は、無い方が良いですから」 『無論。戦争で得をするのは一部の人間であって、大多数の人間は損をするからな。しかし、人間は争いを辞めないのだ。これは、悠久の時を生きた我輩が下す、歴史の必然だ』  きっと、いつまでも戦争は無くならないのだろう。人には欲望がある。明確な自我がある。だから、隔たりが生まれるのだ。  仕方の無いことかもしれない。  認めるのは、癪な事だけれど。 『それで? そなたはこの遺跡を訪れて、一体何が知りたかったのだ?』 「ここが、本当にレスベルとレオンハートに所縁(ゆかり)のある遺跡なのかを知るのが、一番の目的ですね。そして、調査を――」 『調査をしてはならぬ』  台詞を遮られ、威圧感のある声で言論を封じられた。
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