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数分後。雪原の上に気を失った男たちの山が出来上がった。見るも無惨に積み上がり、全員がぐったりと四肢を力無く重力に従って垂らしている。
その中で、最初に蹴られた頭だけが意識を回復していた。
クソがッ、と汚く罵る。
「このアマ、俺達に手を出してただで済むと思うんじゃねぇぞ」
「どう、ただで済まないのでしょうか?」
「星屑の聖座。北方最強の猟兵団が、てめぇら国の貴族どもなんか皆殺しにしてやる! 特にてめぇからな!」
顔面を蹴られたからか、鼻が真っ赤である。どうやら折れているらしい。その痛みも寒さで麻痺しているのか、更に言葉を紡いでいく。
「解ってねぇんだろうが。俺達のトップのお人は強ぇぞ! てめぇなんか一捻りだ、クソッタレッ!」
「そうですか。それがどうかしましたか?」
アリアは剣を鞘に納め、お頭の方へ向き直る。冷静に問いかけた。
「どうかした、だと?」
「私はさっき言ったはずです。貴方たち猟兵団を壊滅させると。やって来るなら万々歳です。一網打尽にしてみせます」
「へッ! できもしねぇことをほざくな! 今や国民の心は俺達、星屑の聖座に集まってる! てめぇらの腐敗政治も終わりだぜっ!!」
アリアは一瞬だけ目を細め、そして男から離れていく。近くに隠れている部下に彼らを王宮まで運んでもらうためだ。
周囲に誰もいないことを確認して、アリアは自分に言い聞かせるように呟いた。
「私が……この国を変えてみせる。必ず……」
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