5217人が本棚に入れています
本棚に追加
/75ページ
ルーゼル王国。
その王都には、各国に蔓延る夜叉や猟兵団を牽制し、時に討ち滅ぼすために存在する組織の総本部がある。
討伐ギルド、探索ギルド等、様々に分類されるそれらを一括りにして『ギルド』と呼称される。
その総本部の一室。大きな窓に接した仕事机の椅子に腰掛け、女性が一人で報告書を眺めていた。
アッシュブロンドでサイドアップテールにしている髪、瞳は透き通る水色。人工的に生み出された物のような端正に整った顔は、見る者男女問わずに惚けさせてしまいそうなほど可憐である。
「……やってくれたわね、クソッタレ」
外見に似合わない罵り文句を吐き出し、報告書を握る手に力を込めた。紙にクシャクシャと皺が寄る。
その事を気にも止めなくなるほどに、女性は憤っていた。
「殺すだけじゃ足りないわね。皮膚を爪先から剥いでいこうかしら。それとも、一分事に剣で少しずつ刺していくのも有りね」
物騒な台詞を口にし続ける彼女の元に、扉をコンコンとノックする音が届いた。
待ち人がやって来たのだ。
いいわよーと了承すると、失礼しますと言う声と共に女性が一人、部屋に足を踏み入れた。
アッシュブロンドの髪は腰辺りまで伸びており、毛先から三分の一の範囲まで何故か紅く染まっている。眼は水色で。顔の造形も、どことなくサイドアップテールの女性と似ている。
当たり前だ。
彼女たちは姉妹なのだから。
最初から部屋にいた女性がシェリア・バリストレイ・アルファル。
後から部屋に来た女性は、シェリー・アルファル。
どちらもギルド兵士である。
最初のコメントを投稿しよう!