第二章 悪魔の団体

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「姉様、突然どうしたのですか?」  齢十八という若さにして、ギルド兵士の憧れを一身に集める――“五吼(ごこう)”の一角である“吼翅(こうし)”、シェリーが先に口を開いた。  聞くものの心を震わせる声。  シェリアは、だらーんと椅子に背中を預けながら、 「どうしたもこうしたもないわよ。アンタ、ザルバリアの事をどれぐらい知ってる?」  唐突な姉の質問に、シェリーは不可思議さを覚えながらも淡々と答える。 「ザルバリア王国。大陸の北に国土を持ち、夏でも寒さを失わない極寒の大地で、毎年不作や凶作に悩まされている。二年前にミシュミランと資源戦争を起こし、辛くもミシュミランの軍を国内から撤退させることに成功しつつも、人民に被害が及ぶ作戦を平然と行っていたことから、民の気持ちは殆ど現国王から離れていて、代わりに“星屑の聖座”を英雄視している模様」  説明口調のシェリーにも拘わらず、シェリアは満足げに頷いて、アンタの頭の中にこれも追加しておくことねと言い、とある書類を手渡した。  そこには。 「来の教団(アカシック・レコード)、ですか」 「そうよ。占星術で未来を先読みする教祖を元にした宗教団体。……まぁ、それはただの表向きの顔だったんだけどね」  書類を上から順に下へ下へと読んでいくと、 「未来予知者を造るために、戦争孤児を拾い集めて人体実験や薬物実験の被験者(モルモット)にしている……」
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