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是非とも詳しく話してあげたいけれど、様々な理由からアリアは首を横に振った。
「何もありませんでしたよ。おそらく、野盗が荒らした後でしょう。見る価値も無いと思いますけどね」
嘘だ。あの遺跡は、世界中の考古学者に教えて、調べさせるべき遺跡だ。
しかしながら、アリアはラシャの言葉を信じた。
あの遺跡に人間をむやみやたらに踏み入らせてはならない。異界が拡がっているだけでも危険極まりないのに、その上ラシャなるモノまでいる。
人間が踏み込んでいい領域を遥かに越えていた。
あそこは、まさに異界だ。
「へェ、マジかよ……。うっわー、スッゲー楽しみにしていたのに! ……ショック」
さっきまでの陽気な雰囲気はどこに? そう思ってしまうほどの落ち込み具合を発揮する一刀。
「村人が怖がるような遺跡ならさ、なんか面白そうなモノとか眠ってるんじゃねェかって思ったんだけどなァ。こりゃ、また出直しか。うし、仕方ねェな!」
と、陰鬱な気分から一瞬にして回復。うおっしゃあああと自らを鼓舞して、また元通りの陽気な雰囲気を取り戻した。
どこまでも少年のような人間。
面白い。
「ん? アンタ、アリアって言ったよな!」
「ええ。そうですが、何か?」
「いやさ、聞き覚えのある名前だなって思ってさ。有名人? どっかのお偉いさんとか? まさか貴族とか?」
尋ねる声音に後ろめたさなど一切感じなかった。素で聞いている。一刀はどうやらアリアが貴族であることを知らないようだ。
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