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頭を深々と下げて、一刀は悪かったと謝った。あまりにも自然に、あまりにも普通に。
――この人は、どうして……。
「カズトさんで、よろしいのですか?」
「おう! 呼び捨てで呼んでくれって、今思えばオレのワガママだよな! うん、悪かったよ。許してくれ。でもオレは、アリアって呼んでいいか?」
「は、はい。アリアで構いません」
一瞬だけ、懸念要素が浮かんだ。
もしも、家族やアリアの素性を知っている者の前で呼び捨てにしたら、一刀はどうなるのだろうか。
追放か、武力行使か。
どちらにしろ、彼が無事で済むことは無いだろう。それだけは解る。
「アリアと、呼んでください」
だけど、一刀がアリアの領地や家族に会う確率なんて、殆どゼロに近い。気にする必要は無い。
何より、アリアは呼ばれたかった。
家族と師匠以外の誰かが、自分を呼び捨てで呼んでくれることを望んでいたのだ。
「頼まれちゃ仕方ねェな。……お、葡萄酒も来たみたいだし。じゃあ、ファーが起きない内に乾杯しようぜ! このチビッ子、酒が大好きなんだよ。さっさと飲まないと、代わりに飲まれちまう」
「駄目ですよ、カズトさん。未成年(十八歳から成人)にお酒は行けません」
「んなこと言われたってなー」
次々とテーブルに載せられる料理。酒のつまみは勿論、魚や肉、それだけでお腹一杯になりそうな料理が無数運ばれてきた。
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