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「コイツ、酒に目が無いからよ。オレがいくら注意しても聞かないんだって。辞めさせるなんて無理無理。絶対に無理。つーか、ほら、乾杯しようぜ」
「あ、はい」
木製のジョッキを持つ。小さな桶ぐらいの大きさだ。驚きながらも取っ手を掴み、持ち上げる。
「かんぱーい!」
「か、乾杯……です」
大声で言うのは恥ずかしかった。周りに人がいるし。それでも、小声で一刀に続く。グラスがぶつかり合い、中の葡萄酒が少しこぼれた。
一刀を見ると、顔を天井に向けて勢いよく酒を喉の奥に流し込んでいる。口の端から葡萄酒が溢れているのも気にしていない様子だ。
――あれが、普通なのでしょうか……?
庶民と酒を飲み交わしたことが無いため、アリアにはどれが正解か判別できない。
意を決し、一刀に倣う形で葡萄酒を飲むことにした。
――この葡萄酒、美味しい……。
「ブハァッ! やっぱり葡萄酒は最高だなァ! おい、おかわり頼むぜ!」
「ふぅ。……これ、凄く美味しいですね」
一刀のようにイッキ飲みは出来なかったけれど、アリアなりに庶民の飲み方を真似した。
おかしな所は無かったと思ったが、一刀はアリアを見てククククと笑いだした。
「あはははははは!! おい、アリア。お前、口の回りが葡萄酒で紫色になってるぜ……ッ。ククク、ヤベぇお腹いてぇよ、あはははははッッ!」
「そ、そんなに笑うことないじゃないですか!」
羞恥で顔が真っ赤になる。
急いで何か拭くものを探していると、
「大丈夫だって。オレが拭いてやるから」
一刀が未だに笑ったままそう言った。
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