第二章 悪魔の団体

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 アリアが呆気に取られている間に、一刀の持ったタオルが近付く。そのまま抵抗せずに、口周りを拭かれた。  ――……お父様――。 「よし、これで綺麗。アリアはアリアなりに飲めばいいんだって。無理してオレに付き合わなくていいぜ。アリアは綺麗なんだから、口周りが汚れていたら皆がガッカリするしさ」 「は、はい……。あの、ありがとうございます」 「おう! いいってことよ! 美人の口を拭かせてもらうなんて役得役得。できるなら、もう一度って感じだなー」 「もう一度!? 駄目です、恥ずかしいですから!」 「冗談だって」  一刀が笑って、頬杖を着く。 「アリアってさ、不思議な奴だなァ。どこか気品があるけど、貴族みたいに他人を見下す感じはしないし。かと言って、庶民でもなさそうだ」  値踏みするような視線に、アリアもジョッキをテーブルに置いて居ずまいを正した。  ――やっぱり、バレてるのでしょうか……。ですが、ライドラール家の一人だとバレたくない――!  楽しいのだ。この一時が、どうしようもなく。心が歓喜している。  一刀と居ると、まるでアリアが普通の女性に戻ったような錯覚を受ける。  大貴族の跡取りでも、猟兵団を駆逐しようとする魔法武芸者でもなく。ただ一人の人間として、接することのできる。 「あ、あの――」 「なーんてな!」  気まずい沈黙をなんとか打開しようとした瞬間、一刀が一層子供みたいな笑みを形作った。 「アリアが話したくなるときまで待つさ。オレ、無理矢理聞き出すこととかしねぇことを心情としているからな」 
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