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「…………」
反射的にすみませんと謝ろうとして、変えた。頭を下げて一言。
「ありがとうございます」
「はっはー、何が? アリアは生真面目過ぎんだよ、筋金入りで。もっとさ、こう、肩の力とか抜かないと駄目だぜ。じゃないと、来の教団の研究者に目ェ付けられるぜ」
相変わらず長い台詞の中に、不審な単語を捉えた。
「来の教団?」
「知らないのか?」
一刀が首を傾げる。
知らない方がおかしいと言いたげな様子。それほど出回っている単語なのだろうか。
「来の教団ってのはな、ユルーラ丘陵の地下にアジトを持つ宗教団体さ。占星術で未来を予知する教祖様が始めたらしいけど、実際は何ともまぁ悪魔の団体らしいぜ」
葡萄酒を飲みながら、ゆっくりと来の教団が何物なのか教えてくれた。それは、アリアが一切知らない情報だった。
「そんな……ユルーラ丘陵に――」
ザルバリアの中でも北側にある、年中雪に覆われた丘として有名で。時々観光客が来ることもある場所だ。
アリアは思う。
どうして今までバレなかったのだろうか。宗教団体は、例外なく国に存在を知らせている。そこに後ろめたさが無ければ、国は別に咎めたりしないからだ。
あの地方の領主は……。
――バインツバルド家の領地……! まさか、国に報告していないのですか!?
無垢な子供が実験の被害に遭っているというのに。
――お金で、懐柔されたのかもしれませんね……。
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