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最低だ。金で買収されたのか、仮にも民を護るべき貴族が。民に見本を見せる筈の貴族が。――最低だ!
「クッ!」
「おいおい、アリア。お前、どこに行くんだよ。――って、聞くのも野暮ってもんか。その形相から察するに、お前、ユルーラ丘陵に行くつもりだろ?」
「……はいッ。無垢な子供たちが今も苦しんでいるのです。ジッとなんてしていられません!」
立ち上がる。料理には一切手を着けていない。一刀には悪いことをしたと思っているが、それでもアリアは向かわなければならないのだ。
「どうしても、行くのか? 奴ら、もしかして“星屑の聖座”を雇っているかもしれないぞ。凄まじい何かを開発していたりするかもしれないんだぜ? 行ったら死ぬかもよ。それでも、アリアは行くのか?」
「はい。行きます」
アリアの即答に、一刀は哄笑した。
「あははははは! 一目見たときからそうじゃないかと思ったけど、それがアリアなんだろうなァ。義を貫く、か。このご時世、それを貫いてばかりいたら命がいくつ在っても足りねぇぞ」
「そのために、強くなりましたから」
「へへ、そうかよ。オマエさ、本当に不器用だよな。本当、笑っちまうぐらいに不器用で、猪突猛進だな」
一刀が新たに頼んであったぶどう酒を一気呑みして、立ち上がった。
「仕方ねぇ。オレも行ってやるよ。アリア一人じゃ、心配だしな」
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