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「そんな……! 貴方に迷惑をかけるわけには――」
「気にすんなよ。元々オレも奴らのやり口は気に食わなかったんだから。いつかブチのめす気でいたんだ」
「ですが――」
これはザルバリア国内の問題だ。一刀は極東の国の人間。直接的には関係ない。迷惑を掛けるわけには――。
アリアは尋ねた。
「貴方の仰った通り、死ぬかもしれませんよ?」
「大丈夫。こう見えてもオレ、意外と強いんだぜ? 大抵の奴には負けねェ自信もあるしな。アリアの足は引っ張らねェよ」
ファーを背中に担ぎ、一刀はカウンターにお金を置いてきた。着いてくる気満々のようだ。
「それでは、約束してください」
「ん、何を?」
酒場から出る直前、アリアは観念してとある条件を口にした。一刀を死なせないための約束。
「わたくしが敵と戦い、もし負けたときは、一目散に逃げてください。わたくしのことは気にせず。振り返らず。お願いですから」
「……ああ、気が向いたらな」
「カズトさん!」
「解った解った。そうするよ。約束するって。だから、さっさと行こうぜ。列車に乗っても、約半日は掛かるんだろ?」
そう言って、一刀は歩き出す。
今からピクニックでも行くのかと思ってしまうような、お気楽な感じで。悪魔の教団が巣くうアジトに赴く足取りでは無かった。
――でも、何故……?
不思議な気持ちを抱きながら、アリアは一刀の後を追いかけた。
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