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結局、アリアたちの乗った列車はユルーラ丘陵まで進まなかった。異常積雪のために、北部の鉄道網を一つ残らず覆い隠してしまったからである。
近くの駅まで進んだので、アリアたちは降りることにした。ここからは徒歩で行くことを選んだのだ。
魔法武芸者の体力なら、そこまで辛く無いと判断してである。
「ファーさんは、いつまで寝ているのですか?」
駅と隣接していた小規模な町で準備を整えてから、一刀とアリアは銀世界と化した草原を一緒に歩き出す。
彼と知り合ってから既に半日過ぎているが、ファーはずっと眠ったままだ。
歩行中は、一刀がずっと背負っている。
「さァ。完璧にふて寝だよ。大好きな酒を飲ませてもらえなかったことや、オレがアリアと一緒にいることなんかでさ。はぁー、いつもは子供扱いするなってうるさいくせに、こんなときだけ子供みたいな行動しやがって。困った奴だよ、本当に」
ザルバリアは雪国だ。ユルーラ地方はその中でもより酷く、一時間おきに雪掻きをしなければ家が潰されることもしょっちゅうである。
毎年、雪降ろしをしている老人が階下に落ちて死ぬケースが多発。国でもそれに対して解決策が協議された。
結果、バインツバルド家の所有している軍が雪降ろしの手伝いをすることになったのだけれど。
――結局、町人が雪降ろしや雪掻きをしていましたね……。
町の人間も口々に不平不満を漏らしていて、その協議に参加していたアリアとしては、土下座してでも謝りたい気分だった。
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