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北の大国。ザルバリア王国。
そこは極寒の大地に覆われた、人間が生きるのが大陸で最も過酷な場所だと言われている。
寒さだけが問題ではない。
“星屑の聖座”。その末端とも呼べる猟兵が言うように、この国の政治家は腐っている。
アリア・ライドラールはこれを変えたくて、彼らの腐敗を止めたくて、貴族としての矜持を取り戻してほしくて、日夜国中を走り回っているのだけど。
「アリア。貴女はいったい何をしているのッ?」
長方形のテーブルが真ん中に置かれた、ライドラール家の応接間。築き上げてきた地位と名声が財を産み出し、貴族でも有数の豪邸を作り上げた。
向かい合う齢五十前の母親が怒りまかせにテーブルを叩く。侍女の用意した紅茶がその弾みでテーブルに散乱した。
「ライドラール家の次期当主が猟兵と戦うなんて危険すぎるわ! もしも貴女の身に何かあればどうするの!」
「心配しすぎですよ、お母様。猟兵といっても、強いものは一握り。幼い頃から鍛えられてきた私には何てこともーー」
「そういうことを言っているのではないッ!」
再びテーブルが揺れる。
「アリア。貴女が強いのは解ってるわ。けれど、猟兵退治なんて、そんなのは軍人に任せればいいの。彼らはそのためにいるのだから」
「しかし、お母様。ザルバリアの軍は、二年前の大戦でかなりの損傷を受けています。おそらく、猟兵団への対応が間に合っていないのでしょう」
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