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「……そう、ですね」
予想していた以上の辛辣な批評に、早くもアリアは落ち込み気味だった。
極東の国からの来訪者である一刀にですら、ザルバリアの貴族たちが腐っていることに気付かれた。
賄賂、武器密輸、軍事強化、税の徴収率増加、猟兵団の動きについて見て見ぬ振り。
それらを平然と行う貴族たち。
民よりも己。他人よりも金。そして、善政よりも醜い権力争いが多発する国議。
もう、どうしようもない処まで来ているのかもしれない。
「年柄年中寒いし、貴族によって治める領地の治安が天地の差なところもあるし、資源戦争のせいで人種差別主義者が増えているし、とある貴族が率先して薬物を高値で売人に流しているらしいし、それに……――」
次々と悪い点が挙げられていく。
――解っていたことなのですが……。
やはり、悪意のない批評は、嘘や誤魔化しを含んでいないからこそ真実で、アリアに堪えるものだった。
しかし、一刀が一転して、笑ってこう言った。
「だけど、良い貴族もいるらしいぞ。名前は思い出せないんだけど、確か西部のガルバーレ地方を治める領主がスゴく良い人だって聞いたな……。女なんだけどよ、スッゲー美人でしかも強いんだってよ。どこの絵本から出てきた人物だよって思わず突っ込んだりしたなァ」
――ガルバーレ地方の領主って、まさか私のことを言っているんですか!?
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