第二章 悪魔の団体

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 ザルバリア王国建国から数十年、ガルバーレ地方の領主は常にライドラール家の人間だった。  それは今日も同じ。  現領主は、父親の遺言通りアリア・ライドラールとなっている。実際税を徴収したり、治安維持に勤めたりと、なかなか忙しい身の上である。  師匠からの頼みともあり、信頼できる部下に公事を託して一週間ほどの休暇を取っているので、今はこうしてユルーラ地方へ足を伸ばしているのだが。  まさかここで、ガルバーレ地方の話が出てこようとは……。 「オレも会ってみてぇな、その領主によ。美人で強くて善政を行う領主ってさ、それだけで物語になりそうだしな。……つか、聞いてるか?」 「え、あ、はい。聞いてますよ」 「じゃあ、オレが何を言っていたか口にしてみろって」 「えーと、ガルバーレ地方の領主様は、とにかく良い人って事ですよね?」  自らを美人とか言うのは気が引けた。強いのは否定しない。幼い頃から鍛練を重ねれば、誰でもこの程度までは強くなれるからだ。  善政を行っているというか、民を想い民のための政治を行うのが領主の役目ではないのだろうか。 「違う違う。アリア、この話で一番大事なのは、その領主が美人で強いってことだ。いいか、美人なだけだったら男が集まるだけだけどな、男にも勝てるぐらい強かったら女も寄ってくるんだよ。すげェよな、マジパネェよ!」 「は、はぁ。そうですか」  生返事しか出来ないアリアを誰が責められようか。鼻息荒くする一刀は、やべーやべーと連呼しながら雪の中を突き進んでいく。
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