第二章 悪魔の団体

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 その背中に、アリアは辛辣な質問を投げ掛けた。 「ですが、その領主も賄賂や武器密輸をしているかもしれませんよ。そして、売人に麻薬を流しているかもしれない」  ガルバーレ地方の領主はアリアだ。本人なのだから、それらをしていないとハッキリ言い切れる。  だが、一刀は知らない。  アリアが貴族だということも、地方を治める有力貴族の跡取りということも。  にも拘わらず、一刀は笑って答えた。 「それは、無いと思うけどな」 「……何故、ですか?」  あまりにも堂々した返答に、アリアは目を丸くして尋ねた。何をどう判断して、一刀が否定したのか知りたかったから。  そんなアリアの心境を知ってか知らずか、一刀は子供みたいに無邪気な笑みを携えて、一歩一歩着実にユルーラ丘陵へ歩んでいく。  その背を追うアリア。 「…………」 「…………」  二人の沈黙が、雪降る銀世界に静けさをもたらした。どこまでも静かで。閑静としていて。神秘的で。  シンシンと降り注ぐ大粒の雪は、アリアと一刀の服に付着して溶けて水と化す。  アリアには、まるでそれが国民の血税にようにも見て取れた。  服に付着するまで雪として体裁を持っていたのに、触れた瞬間溶けて無くなる。売国奴(貴族)の手に渡った税は、きっと国民のために使われることは無いのだろう。 「…………」 「あの……カズトさん?」 「……アリア。オレはな、信じてんだよ。どんな国にでも、一人くらいは国を想う人間がいるってさ」
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