第二章 悪魔の団体

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「…………」 「そりゃあ、アリアの言う通りだよ。国民が騙されているだけで、その美人で善政をする女も、実は裏で私腹を肥やしているのかも知れねェしさ。だけど、そう考えるよりもさ、美人で強くて国を想ってくれているって考えた方が楽しいし嬉しいだろ?」  一刀は苦笑しつつ、オレはザルバリア人じゃないからなと付け加えた。 「だから、こういう感じで世界を見てるんだよ。主観と客観。どちらかを無くしたら、その人間が観る世界は色褪せちまうからな」 「主観と客観……」 「良いところと悪いところ。それを受け止めようとするアリアは偉いと思うぞ、本当に。案外、そのガルバーレ地方の領主ってアリアなんじゃねェの?」 「……わたくしは貴族ではありませんよ」 「それもアリアの主張でしかないだろ? オレは客観的に見て判断するさ」  子供の作る笑みは二種類ある。一つは無邪気な物。そしてもう一つは悪戯心を含んだ物である。  一刀のそれは、明らかに後者だった。 「……本当は知ってるんじゃないですか?」  その問い掛けがある意味肯定を表しているのだが、一刀は何も言わずに先を進んでいく。背中に子供を抱え、荷物を両手からぶら下げているにも拘わらず疲れた様子は微塵もない。  ――……この人は、今まで出会った人間と本質的に違うのかもしれないですね。  足場の悪い雪道を二人は黙々と進み続ける。さほど遠くないと記憶していたが、やはり徒歩となると時間は掛かってしまう。  そろそろ一休みしましょうか、と一刀に声を掛けようとしたその時だった。 「一刀ォ……儂は腹が減ったぞォ……。食べ物を寄越せぇ……」  一刀の背中に張り付いている幼子が、ブツブツと何かを言い出した。
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