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アリアが見ている限り、ファーは何もしていない。一刀と同じ方向を見詰めている。
その先には何もない筈。一面銀世界が広がっているだけなのに。一体何を眺めているのだろうか。
――!? ……これは――。
「嫌な予感が当たっちまったな。アリア、まだ向こうはオレたちに気付いてないはずだ。此方に来い」
「はい」
一刀の腕に引かれ、三人は近くの窪みに移動した。元々ここだけ陥没していたのだろう。雪の段差が出来ている。
そこに身を臥せて、奴らがやって来るのを待っていると。
「来たのう。奴らの装備と服を見るからに――」
「ああ、星屑の聖座だ」
先程までアリアたちがいた付近を五人の男共が通り過ぎていく。星屑の聖座特有の特徴ある服に、感じ慣れた独特の気配。間違いない。
「どうして、こんな辺境な場所に星屑の聖座が……」
「まぁ、何にしても観光目的じゃ無さそうだよな。そんな連中とも思えない。考えられるのはたった一つ」
「……やはり、来の教団に雇われているということですか?」
一応疑問系にしたが、口調はほとんど断定だった。他に推測のしようがない。ユルーラ丘陵に立ち寄る理由など“それ”しか存在しないのだから。
けど、一刀は笑って言った。
「さぁな。これだけじゃまだ解らないって。一部過激派の奴らかもしれねぇし」
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