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「だから何だと言うの!? 猟兵がいくら意気がろうが、所詮は下々の身分。貴女が関わるべき人間たちじゃないわ!」
「お母様……。そういう問題ではなくて、猟兵団を野放しにしておくと国民に被害が及ぶ可能性がーー」
「国民のことを貴女が考える必要ありません!」
金切り声を発して、アリアの母親は立ち上がった。その際、膝がテーブルにぶつかったのだろう。ついにカップが倒れ、テーブルに紅茶が溢れた。
「貴女はライドラール家がさらに発展することだけを考えていればいいの! お父様からもそう言われたでしょう!?」
「お母様。わたくしはお父様からこの国をもっと良くしろと言われました」
アリアの父親は五年前に他界した。堅実で勇猛で実直な人だった。多少融通の効かないところはあったけれど。
だが、規則を守り、民を想っていたからこそ、ザルバリア王国軍の中将にまで登り詰め、部下からも信頼が厚かった。
勿論、アリアも大好きだった。
父は死ぬ間際、アリアに言った。
この国を良くしろ、と。
国民がいてこそ王国は成り立っているのだから、と。
だから、アリアは民衆から金品を強奪する猟兵団を悉く倒してきたというのに。
貴族絶対主義に染まってしまった母親には解ってもらえなかったようだ。
気付いたときには頬を叩かれていた。
母親は顔を怒りに歪めながら、大股で大広間から出ていった。
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