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ゼクセルの奇人変態振りは今に始まったことではない。
昔から、そう、出逢ったその瞬間から、彼は研究者としての知的さと発明者としての変質さを兼ね備えていたのだから。
ゼクセルのそれらは他の人間と較べて突出していた。例えるなら、地の底にいる一般人が高峰にいるゼクセルを仰ぎ見るような。
遠く、眩しく、妬ましい。
その差はどうしようもなく隔絶していた。
世間と較べて断絶された才能の持ち主は、“異常”と判断され断罪させられるのが世の常である。
ゼクセルも例外ではなかった。
シェリアは水色の瞳を瞬かせて、
「未来予知者を創るために来の教団を造ったのって“嘘”なんでしょ?」
「感心を一つ、よく気づいた」
「気づかないとでも思ってたの? アンタたちの長がそれに近い異能を持っていて、アンタはその長に惚れ込んでいる。故に“創らない”。推測は簡単よ」
「訂正を一つ、あの方の未来予知は異能とは違う。正確に表現するのなら“未来俯瞰”だろう」
男は続けて、
「しかし、貴様らの長こそ未来予知しているという噂があるがな」
火の手は近い。爆発音の感覚も短くなっている。時間は有限。それでも、シェリアはゼクセルの位置を掴めないでいる。
早く。早く。早く!
アイツは一体どこにいる!?
「あの幼女は“未来縫合”よ。クソ生意気なくせして、口から出る出任せを縫い合わせて矛盾を消すんだから」
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