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憎たらしい幼女の顔が脳内で反芻される。奴はケケケケ、と楽しげに笑っている。
いつでもどこでも鬱陶しい上司だ。
「で? アンタらの目的は何? 未来予知者を造るとかワケ解んない理由の裏に何があるのよ」
「答えを一つ、簡単な話だ。合成獣計画、天使化計画、ワタシが進めてきた実験の最終段階を推し進めるだけ」
まさか――。
シェリアは怒鳴った。
「アンタ、正気!? 堕天使も天使も人間の手に負える代物じゃないわ! あの時、身をもって知ったでしょうがッ!」
「嘆きを一つ、ワタシの失敗は人間の身体を天使に昇華させようとした点。堕天使に堕落させようとした点。そして――失敗した」
ならば答えは決まっている、とゼクセルは付け加えた。
「天使も堕天使も、人の中に押し留めてしまえば良い。第一世界に成功した男、クルードが成し遂げたように」
「――――外道が」
唾棄するように吐き捨てる。
「必ず死ぬわよ、その実験体」
「肯定を一つ、そうだろうな。二次覚醒すれば数ヵ月の内に精神を破壊される。人間の心は脆く弱い。だが、ワタシは見てみたい。化け物を内包した人間の力というものを」
「それをここでしていたのね」
「肯定を続ける、その通りだ。子供は容易に感化される。天使だろうが堕天使だろうが。故に実験体にした。そして、実験は成功した」
「――止めてやる」
「否定する、不可能だ」
「アンタを殺すわ。今ここでね」
ネの部分を強調し、シェリアは大剣を無造作に振るった。
剣先から放たれた衝波が研究所の壁を斜めに切断する。
壊れ、崩れ、朽ちていく。
ゼクセルは嘲笑った。
「嘲笑を一つ、無闇に剣を振るったところでワタシを捉えることなど――」
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