第一章 ザルバリアの現実

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 衝撃によって頬が赤く染まる。痛みはある。身体にではなく、どちらかというと精神的な部分に。  母に叩かれたのはいつ以来だろう。今日だって久し振りに会話をしたというのに。不仲は父が死んでからだと思う。 「あ、アリアお嬢様、大丈夫ですか?」 「ええ、大丈夫ですよ」  腰を上げ、大広間から出ていくアリアに侍女が付き添う。赤くなった頬のことを心配されたが、気丈に振る舞ってみせた。  あまり家庭内の心配をされたくなかったのだ。 「今日の日程をお知らせします」  彼女はアリアに小さい頃から良くしてくれている侍女の一人。フリフリのスカートなんかが良く似合っている。  貴族ならではとも言える綿密なスケジュールを管理してくれたり、ドレスなどの衣装の着替えを手伝ってくれたりもする。  アリアが猟兵団と戦う時間を取れるのも、この侍女のお陰だ。母親との不仲も彼女がいるからこそ、この程度で済んでいる節すらある。  本当に頭が下がる思いだ。 「既に時刻は夕刻を過ぎています。夜はバインツバルド家でパーティーに、お嬢様は参席なされます。帰ってくる時刻を午前一時と考え、就寝は午前一時半。明日の起床は午前六時となっております」 「解りました。では、今からドレスに着替えないといけませんね」  今の服装は猟兵団の討伐から帰ってきたばかりなので、かなり庶民的な格好である。  首に巻かれた白いマフラーだけは端から見ても高級品だと解る一品だが。
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