第一章 ザルバリアの現実

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 豪邸は広い。他の大貴族と比べたら狭い方の屋敷だが。侍女を引き連れて歩くこと数分、漸くアリアの部屋に辿り着いた。  質素な部屋だ。アリア自身、そう思う。机と椅子、そしてベッド。クローゼットと鏡があるだけ。豪邸の中なのだが、ここだけ別の家にあるようなそんな感じ。  見慣れた自室の簡素さをアリアは気にせず、服を脱ぎ始める。本音を言えば行きたくないのだが、パーティーに遅れるわけにはいかない。  侍女も黙々とドレスを用意し始めている。青いドレスだった。父がお前に似合うからと特注で作ってくれた逸品である。  ――……早く着替えましょう。お父様のことを考えていても、仕方ありませんし。  父の笑顔を記憶の隅に追いやって、アリアはふと鏡に写った自分の姿を見詰めた。  灰色の髪は胸の辺りにまで伸びていて、毛先が上向きに跳ねている。瞳は紺碧。両方とも。これはザルバリアの貴族たる証である。  ちなみに母親の瞳は黄色。  体型はスリムな方だと思う。筋肉が要所要所に付いているが、筋肉質な雰囲気は感じられない。  最近また胸が大きくなり始めたからか、頻繁に肩が凝ってしまう。これだけはいくら経っても馴染めそうにない。  本当、どうして胸なんて大きくなるのだろうか。戦うときも気になるし。鬱陶しい。 「お嬢様、ドレスの用意が出来ました」 「え? あ、ああ。ごめんなさい。すぐに脱ぎますから」  脱ぐと言っても、軽装だから時間はいらない。ものの十数秒で下着姿になった。
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