始まりの前

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―――――懐かしい夢をみた、あれはいつかのクリスマスイブだったか… その昔、夢に出てきたサンタに聞いた事があった 「なぁサンタクロース…どうして家にはプレゼントを持ってこねぇんだよ。」 腕を組み、目の前のサンタクロースを睨みつけながら問い掛けた 「それはね―――――」 サンタクロースの爺さんは、俺の目の前に屈んで真面目な顔で言い放った 「お前の家がビンボーだからだよ。」 「―――ふんっ!」 「ぐぉっ!?」 サンタは噂以上に正直な奴だった 俺はボディーブローを決めた右手を振りながら、目の前の爺を睨む 「何かむかついた、反省も後悔もしていない」 「ぬぉおぉぉっ、何という理不尽じゃ」 「ちっ、タフなジジィだ」 そして存外に回復の早い爺だった 『―――で、どうすりゃプレゼントが貰えんだよ、弟がゲームポーイを欲しがってんだけど』 いきなりボディーブローをかましておいてなんだが、サンタクロースには用があるので取り敢えず聞いてみる しかし、サンタは無慈悲にも告げた 「働け少年!!働かざるもの食うべからずと言うじゃろ、欲しいものは自分の力で何とかしろ」 嫌にキラキラとした笑顔でそう告げるサンタに再び殺意が湧き、2発目のボディーブローをかまそうと近付いた俺にサンタは再びくそ真面目な表情で言い放った 「だが信じろ…最後に笑うのはきっと…ひたむきで真面目な奴だから…それでもお前んところにはプレゼントはやらないがな」 「死に腐れ糞ジジィッ!!!!!」 勢いよく振り下ろした拳はすんでのところで避けられ、サンタはそのままフワフワと天へと昇っていく 「糞サンタが!!二度と来るんじゃねぇっ!!」 「もう二度と来ないよ~、お前のところだけにはな~」 そう最後に言い残し、サンタの姿が遂に見えなくなった サンタが消えた時に残っていたのは、発散できなかった憤りの感情と確かな教訓だった 欲しいものは自分の力で何とかする、何もしないで待っていても助けてくれる奴はいない 頼れるのは自分だけなのだ 俺こと綾崎隼人はその教訓を胸にこれから生きていく事を決めたのだ。
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