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「…まぁ、俺達だけがこの公園にいるって訳じゃねぇから、女一人いたっておかしくはねぇだろ」
「そうだね、でもあんな薄着で大丈夫かな?」
自分が今大変な状況なのに、見ず知らずの人間を自然に心配できる弟に、相変わらず人が良い奴だと呆れた視線を向けながら、俺達も自販機へと向かう
「大方近所に住んでてジュースでも買いに来てんだろ、俺達もさっさと………ん?」
「兄さん?」
視線をハヤテから自販機へと戻すと、先程の少女の傍らに二人の男がいた
髪の毛を金色に染めた男は慣れたように少女へと話し掛けている
どうやら件の少女をナンパしているようだ
少女の方は混乱しているかのように慌てている
その様子を片方の黒髪の男はニヤニヤと眺めていた
遂には少女の腕を強引に取り、無理矢理引っ張ろうとしでかした
無意識に溜め息が出る
俺はゆっくりとその両者へと近付いていった
全く…災難だ
私は出ようとする悪態を胸中に押し止め、目前の若い男達を睨む
せっかく煙たい場所から抜け出し、少し散歩を楽しもうかと思った小さい公園にて見つけた自販機から何か飲み物を買おうとしたところ
声をかけられ、振り向けば見知らぬ男が二人、お世辞にも良い笑顔とは言えない笑みを浮かべながら私を見ていた
「ね~ね~君可愛いね~、せっかくのクリスマスイブに一人なんて、俺達とどっか楽しいところに遊びに行かない?」
ほう、これがナンパというモノか
私が感じたのは、たったそれだけだった
下心丸見えの世辞など嬉しくないどころか、不快極まりなかった
「結構だ、私に話し掛けるな」
視線を自販機に移し、再び何を買おうかと思案する
「まぁまぁ、そう照れずにさぁ、きっと楽しいよ」
横で未だに話し掛けてくる男を意図的に無視し続ける、これで去って行けば良いのだが…
目論みは上手くいかず、事もあろうに、その男は私の腕を掴んできた
「いいからいいから、一緒に行こうぜ?なっ?」
「は…離せ!私に触るな!!」
気安く私の腕を掴み引っ張ろうとする男に精一杯抵抗するが、体格の違いのせいか私の抵抗も虚しく徐々に引き寄せられていく
「じゃあ夜の街へ出発~♪」
「くっ!離せ!!…マリア―――」
頭に浮かんだ大切な人の名を呼んだ私の身体は、唐突に引っ張っていた腕の勢いが止まった事で同じように停止した
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