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近付いてきた少年の顔立ちは、よく見ると助けてくれた男とよく似通っていた
歳は私と同じくらいだろうか…
「大丈夫だよ、兄さんはただ照れているだけだから」
「だ…誰がっ!?」
狼狽している男に振り向くと、その男はサッと眼を横に逸らした
その頬は少し赤くなっていた
「ふ…ふふっ」
知らず知らずの内に息が漏れた
私が笑ったのに気付いたのかジト目で睨みつけてくる男に、悪いと思い頭を下げた
と、直後寒い風が私の身体に吹き付け、その寒さに身を震わせる
私を睨んでいた男は、微かに分かる程度に心配そうな表情を浮かべる
「…そりゃ、そんな格好じゃ寒いだろうよ」
「ん…あぁ、ちょっとな…」
呆れたように話す男に私は腕で身体を抱きながら、苦笑する
「色々あってパーティーを飛び出してきたんだ。だからコートを忘れてきてしまって…ヘクチッ!」
喋っている最中、くしゃみが出た
このままいれば風邪を引いてしまうな…と、何処か呑気に思っていると…
「………ちっ!」
苛立たしげな舌打ちが聞こえ、続いて何かが私の肩に掛けられるのが分かった
男の方に目を向けると、長袖のシャツの男がいた
自分の身体を見下ろすと、今まで男が羽織っていたコートが掛けられていた
「お前…」
「………目の前で寒そうにくしゃみされるのは鬱陶しいからな」
「でも、それじゃあお前が…」
慌てて脱ごうとする私に、同じように慌てて男は私を止めた
「い…いいから黙って着てろってんだ!ガキは大人しく言うこときいてろ!」
「なっ!?ガ…ガキって言うな!」
唐突なガキ呼ばわりに私は慌てて抗議する
先ほどとは打って変わって睨み合う私達の間に二本の缶が差し込まれた
「落ち着いてよ、兄さん!…君も…」
「…ハヤテ」
差し出された缶を受け取り、私達は睨み合うのを止めた
「兄さん、初対面の人にいきなりガキは酷いと思うよ?」
「………」
「兄さん?」
少年の眼差しに負け、男は諦めたように目を閉じて息を吐いた
「………わ…悪かった」
「い…いや、私も恩人に対しての態度じゃなかった、ごめん」
謝ってきた男に対し、私も自分の非礼を詫びる
そうだ、先程だって彼の厚意によるものなのだ、感謝しなければならない
「助けてもらってばかりでは悪いから…私からもお礼がしたいな」
「「お礼?」」
二人揃って首を傾げるのを見ながら私は続ける
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