出会い

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「うむ、なんでもいいぞ…言ってみろ」 機嫌良く言う私に、男は黙って首を振る 『別に礼が欲しくて助けた訳じゃねぇんだけどな』 「そう言うな、礼をしなくては私の気がすまん」 渋る男に私は根気よく問うてみる その最中、こんな寒い中で考えている必要もないかと気付いた 「取り敢えず私の家に向かうぞ、お前も寒いだろ」 『だから、別に…』 「兄さん、諦めた方がいいかもしれないよ?あの子強引そうだし、兄さんも寒いでしょ?」 『…寒かねぇよ』 後ろから二人が会話しているのが聞こえるが、それに構わずケータイを取り出そうとして気付いた 「しまった、ケータイを忘れてきてしまったか」 私の呟きに気付いたのか、男は溜め息を吐いた 『仕方ねぇ、お前ん家の番号を教えろ、そこら辺の公衆電話からお前の家にかけるから』 「いや、悪いし…私からかけるよ」 『いいから待ってろっての、俺が行ってくるから』 私がどうしようか迷っていると、ハヤテと呼ばれていた少年がこっそり私に耳打ちしてきた 「此処は兄さんに任せてあげてくれないかな?兄さんは君が寒いと思って気を使ってあげてるんだ」 「そうなのか…」 「兄さんは不器用だから、分かり難いんだよ、でも本当は凄く優しい人なんだ、ちょっと子供っぽいけどね」 ハヤテは誇らしげに兄さんと呼ぶ男の事を話す 確かに…優しくなければこんな寒い中、自分のコートを貸したりなんかはできないだろう そう気付くと確かにこの男はかなりのお人よしなのだと気付いた 「…分かった、じゃあお願いする、番号は―――――――」 口答で番号を伝えて、男が走っていくのを眺めながら、私はハヤテがくれた缶コーヒーを開けて、一口飲んだ その安っぽい温かさを堪能しながら、ふとポケットの中に手を入れると紙のような物が手に当たった (なんだ、これ…【隼人君&ハヤテ君へ】…ハヤテはこいつの事だから、隼人というのがあいつの名前かな) 「隼人…か」 あの男を思い浮かべると、胸がドキドキしだすのを感じた (またドキドキが始まっちゃった、でも…強くて口は悪いけど優しくて…かっこいい…) 気恥ずかしさをごまかすように頭を振ると、改めてその手紙を眺める 隣を見るとハヤテの姿がいつの間にかなかった 慌てて周りを探そうと歩きだした、辺りを見渡す私の背後で忍び寄る影に気付かずに………
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