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とある日の早朝
俺の耳に断続的に聞こえる音が入り、俺は眠りの淵から目が覚めた
重い瞼を無理矢理開き、身体を伸ばす
凝り固まった身体を解すように動かすと布団から抜け出し、今まで寝ていた居間から台所へと向かった
ひょいと顔を覗かせるとそこには幼い少年が台座を足場にリズム良く包丁で野菜を刻んでいる
その様子を眺めている俺の視線に気付いたのか、その少年は包丁を動かすのを止めて振り返った
その瞳が俺を捕らえると、少年はにっこりと笑顔を浮かべた
「おはよう、兄さん」
この少年が、小学生ながら我が家の家事総てを担当する俺の弟である綾崎ハヤテなのである
「あぁ…おはようさん、悪いな毎日朝飯作るの任せちまって」
「ううん、大丈夫だよ。それに…僕はこれくらいしか兄さんの役に立てないし」
複雑な表情をしているだろう俺に対しハヤテは笑顔で首を振り、最後に寂しげに俺を見つめる
「兄さん、やっぱり僕も働いた方が―――」
「ガキはガキらしく外で遊んでりゃいい、お前が気にする事はねぇよ」
俺を見上げる涙目の弟の頭を乱暴に撫で回し、脇に手をやり抱き上げる
あまり多く食べさせてやれないからか、それとも元々そういう体質なのかハヤテは女の子のように細く小さい顔立ちも女のような柔らかさだ、恐らくそういう服を着させたら少女にしか見えないだろう
一度小肥りの変質者に誘拐されそうになった程だ
無論その前に駆け付け、死なない程度に痛め付けたが
急に抱き上げられびっくりしつつも、恥ずかしげに頬を染めるハヤテに言い聞かせる
ただでさえ普通の小学生なら遊び回っている時間帯さえハヤテは家事に勤しんでいるのだ、これ以上ハヤテの時間を奪うことはしたくなかった
ハヤテが複雑そうに頷くのを確認した後、ハヤテを降ろし、もう一度頭をポンと叩いた
「朝飯にしようぜ、腹が減っちまった」
「―――うんっ」
こうして、今日も変わらず俺達の一日が始まるのだ
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