始まり

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そう、何故世間ではクリスマスイヴだというのに、高校生である俺が働いているかというと… (両親共に無職なんて死んでも言えるかっ) 心中で愚痴る 例えば無職の理由が不況によるリストラや事故のせいならば同情の余地はある だが親父は… 「父さんにはもっと…自分に相応しい有意義な仕事があると思うんだ。」 などと夢見がちな事をほざいて定職につかず お袋は… 「母さんは馬券を買っているんじゃないの。夢を買っているの!!」 などと言って家事すらしない 正直ぶん殴りたくなる程腐った両親だが、それでも血の繋がった人間なのだ 俺はともかくハヤテは家族が傷付くと悲しむだろう そう思うと手を出すことはできなかった 「信じられる者は自分だけ、欲しいものは自分の手で手に入れる」 改めてその教訓を反復しつつ、押していた自転車に跨がり会社への帰路を急いだのであった 「綾崎君、君はクビだ」 やっとこさ帰ってきた俺に対して投げ掛けられたのは唐突な言葉だった いきなり過ぎて唖然としてしまった俺は我に返ると猛然と上司の前へと駆け寄った 「な…なんでだよ!?仕事はちゃんとやって…」 「確かに君は口は滅法悪いがウチの中では最も速くて優秀だ」 「じゃあなんで!?」 目の前の眼鏡の上司は厳しい表情を崩さず言う それだけ聞けばクビにされる理由がない、あと口が悪いのは放っておけ 「綾崎君、君は年齢を偽っているな」 上司の言葉にギクッと肩が跳ねる 上司は確信を持った瞳でこちらを睨んでいた 「ウチの募集規定は18歳以上なのに…君はまだ16歳だそうじゃないか」 二の句を告げない俺に対し容赦なく掛けられる言葉、それに俺は搾り出すように言葉を紡ぐ 「な…なんで、それを…!?」 「先程、君のご両親が来て、そう告げられた」 「は!?何であの親が?」 いきなりの言葉に更に驚愕し、言葉を無くす そんな俺に構わず、上司はさも失望したかのように溜息を吐き出した 「全く…態度は悪いが真面目で優秀な若者だと思っていたのに裏切られたよ」 態度は悪いのところで思わず悪態をつこうとした俺は更なる事実に今度こそ言葉をなくした 「取り敢えず今月の給料17万はご両親に渡しておいたから」 「―――っ!!!???」
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