暗いやまだ

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―ザクッ、ザクッ 部屋の片隅でカッターの刃を手首にあてがい引く度にその後を追うように赤い線が浮き出てくる。 「…ふふふっ」 ドクン、ドクンと手首が疼き焼けるように痛いが、それと同時に生きている事を強く実感する。深く入れれば入れるほど落ち着く、俺にとって麻薬のようなモノ。 ―ガチャッ 「ヤスおる……えっ?」 不意に部屋の扉が開かれて丸山が顔をのぞかせる。 そして自分の視界に入っている光景をみたと同時に走ってくればカッターをもぎ取り投げ捨てる。 「何してんねん!?」 驚いたような苦しそうな顔で目に涙を浮かべながら尋ねてくる。 「何って、リス…」 最後まで言わないうちに気がつけば丸山の腕の中にすっぽりと収まっていた。 「…なんでそんな泣きそうな顔してん?」 顔を見上げて尋ねた。丸山は痛くないし苦しくない、泣く理由がわからない。 「なに言ってん、泣きそうなんはヤスの方やんっ!」 「えっ…?」 そう丸山に言われて気がつけば涙がポロポロと頬を伝って流れていく。 「あれっ、おかしいなぁ」 なんだか可笑しくて笑おうとすればするほど涙が止まらない。 「…ヤス、気づけへんでごめんな?」 そう言いながら手で涙を拭ってやり頭を撫でなでしてくれる。 こんな優しさがあるんや…って体感した日。 今度は俺が丸山を笑わせあげなあかんな。 それが今の俺に出来る精一杯のお返しやから。
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