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たいていの人間は金持ちになれるものなら、なりたいと願うはず。
だが、彼にとって金持ちになる。という事自体には、何の魅力も感じなかった。
欲しいものはある程度の物なら何でも手に入った。
そりゃあ、何の苦労も無しに欲しい物が手に入るわけでは無い。
だが、手に入れる為にする多少の苦労。
それがまた心地いい物にさえ感じだしてきた。
自分はこの生き方に向いていたのかも知れない。
そんな事を考えていると、先程、馬車に乗せてくれた若男が声をかけてきた。
「今から行く街はとても大きな街ですからね。治安もしっかりしていて安心ですよ。」
それでいて、この砂漠地方には珍しく大きなオアシスがあり、それに寄り添うように大きな宮殿が建てられている。
そして、その宮殿の兵士達が城下町を守っているのでとても治安がいいのだ。
彼自身も今から向かう街に初めて訪れるわけではない。一度いったときの印象は、彼にとってはできればあんまり長く居たく無い街だ。
「実は私、この街が故郷なんですよ。久々に家族の奴にも顔を見せてやれるってもんです。」
その若男は少しハニカミながら語っていた。
そして……
「お兄さんの家族とかは、今どうしてるのですか?」と尋ねてきた。
「実は俺、大分前に、家飛び出して来たんですよ。だから今何をしてるかなんて全然知らないですね。」
と返事をし、彼はこの街でどう生活していくかを考える事にした。
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