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目覚まし時計が鳴る数分前に目が覚めた。
今日は兵藤(ヒョウドウ)高校の入学式だ。今日から楽しい高校生活がスタートする……はず。
でも、はっきり言って不安の方が大きい。
兵藤は、県内では割と有名な進学校だ。
それなのに校舎のキレイさに惹かれて志望したり、ダメ元で受けた推薦入試に受かっちゃったりして。
いや、嬉しくない訳じゃないんだけど。
とにかく、勉強についていけるか不安で仕方ない。
それ以上に心配なのは、馴染めるかどうか。生徒がすごく濃い人ばかりって聞いたことがあるから。
何か、行きたくないな……。
いや、行くしかないんだけど。
「くわぁあげつなぁぁぁぁぁ!」
人間とは思えない大きさの声が降ってくる。
姉ちゃんの喜多(キタ)だ。この女の声帯は鉄製なのだろうか。
9つ歳上の姉ちゃんは、僕にとっては恐怖という概念を具現化したような存在である。
「いつまで寝とんじゃあ景綱! 早起きせんのなら三文貰うでぇ!」
相変わらずどこ弁か分からない方言で、三文とか変なことを言っている。
「起きる、起きるから命だけは助けてください」
「早うせえ、食洗機が回せん」
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