黒薔薇と黒揚羽

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カンカンカンカンカンカン。 ガタンゴトンガタン。 電車が通り過ぎる音。 十五分置きに通るそれの音を聞くでもなく聴く。 バルコニーに干した洗濯物の隙間から覗く紺碧の天を眺める。 扇風機の無機質な風音。蝉時雨。車の走る音。 蚊取り線香の匂いがぷんと鼻腔を擽る。 雑音と雑居に囲まれたこの環境が、私をより空虚にさせる。 日常から非日常になりたいと思ってしまう。 異常なことなのだろうか。 異常でもなんでもいいけれど、私は詰まらない人間になるのは厭だし詰まらない思いも事もしたくはない。 だから、日常を壊したい。壊したい衝動に駆られる。 これは──抑えにくい衝動。
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