激しさをこの胸に抱いて

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「日本語は苦手なんですけど色々考えて妄想するのは好きなんです」 「まぁ人間は考える葦だからね──例えば?」 「んー色々ですよね。彼氏は凄い優しい人なんですが、例えば私が台所でご飯を作っているとまだか!って叫びながら激昂して頬を打たれるんじゃないかと妄想する訳です。もちろん私はごめんなさいと涙や鼻水を汚く流しながら足に縋っているんですが、その鼻水や涙が彼氏のズボンについてまた腹を蹴られるという妄想をして愉悦する訳です」 彫り師は目を細めて口の端を吊り上げて冷笑する。 その、人を虚仮降ろしたような一連の仕草がぞくぞくとさせた。 「とんだマゾヒストだな──他は?」 虚仮降ろしたかと思えば子供のような無邪気で好奇心だけの目で私を見る。面食らってしまう。 「あとは、私は目か脳が悪いのか変なものが見えてしまうのですが、それらの生前やらなんやらを妄想したりしてますね」 「幽霊とか?」 私はこくりと頷く。 莫迦にされるのだろうなと予想は出来た。
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