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だが、違った。
双眼を輝かせながら続きを促す。
一通り話終えると「面白い子だな」と笑った。屈託のない笑い方も出来るのかと思った。
だから──と私は続ける。
「だから、マゾヒストな意味で被虐的な愉悦を求める為に墨を入れてるのかもしれないし、ただ単に非日常感を求めての他人の力を借りて自傷行為をしているに過ぎないかもしれない。自分でデザインした墨を入れるという顕示欲から来るものかも分からない──なんというか…何を言おうとしてるのか分かんなくなりました」。
そして続ける。
「とにかく全部含めて日常を破壊したいのかも知れないですね。この詰まらない日常を」
彫り師は私の言葉を一言一句を残さず拾い上げ呑み込む。
相槌も打たず、目で聴く。
「詰まる日常、面白い非日常が日常になった場合また面白くなくなるよね?」
ふと、思いついたように彫り師が言う。
「エンドレスですよね。ウロボロスみたい。面黒いことだらけですよ日常なんて結局」
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