4人が本棚に入れています
本棚に追加
『……何でって、入学したからに決まってんだろっ! 剣道で推薦もらえてさ、それで……』
やけに喉が渇いていた。無理に笑ったら更に空気が凍ったような気がした。焦ったら早口になって、終いには言葉に詰まってしまった。
『……剣道、まだやってたんだ、』
だから、鳴海が何処かホッとしたようにそう呟いてくれた時は、きっとその何十倍も俺は安心したんだ。
なんだ、久々なもんで緊張してるだけか。ったく、幼馴染みの俺にまでその『超人見知りぐせ』発動させなくても。なんて。
気を取り直したのも付かぬ間だった。
『あのさ、なる、』
『ごめん、俺、役員だからそろそろ行くね』
『え、ちょ、なるっ!』
鳴海はいきなり会話を断ち切ると、足早に体育館の方へと消えてしまったのだ。
咄嗟に呼び止める俺の声なんてまるで聞こえてない様子で、ただの一度も振り返ることなく。
思わず声と共に動いた右手は空を路頭に彷徨ったまま、俺は呆然と立ち尽くすことしか出来なかった。
最初のコメントを投稿しよう!