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「全く……」
そう呟きながら、職員室のドアを開けると、ひんやり冷房の風が体を包んだ。
「結城先生、モテモテですね」
私の姿を確認すると、数学教師の高田先生が声を掛けてきた。
やせ型で色白。トレードマークの黒ぶちの眼鏡を指であげ、こちらに目を光らせる。
私と松田君とのやり取りを見ていたらしい。
「生徒達の間では、結城先生のファンクラブも、あるらしいですよ」
「そうなんですか……」
彼は、私の直属の上司だ。学年主任で、私が副担任を務める三年A組の担任でもある。
「生徒達に色目ばっかり振り撒いてないで、しっかり頼みますよ」
(色目なんて…)
「すみません……」
それだけ言い残すと、高田先生は席に戻った。
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