男子生徒F君の憂鬱

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男子生徒F君の憂鬱

「いいかお前たち!この休みを制する者が受験を制するんだぞ!」 そうホームルームで担任教師が叫んでいる。 「先生、それは夏休みです」 クラス委員長がそう言った。 「もっさん間違えてやんの!だせぇ」 先ほどの自称脇役がおちょくる。 そんな光景を見て、俺はため息をついた。 つまらない。 そう、俺の人生はつまらない。 別にどうこうしたいわけじゃない。 別にどうこうできるわけじゃない。 ある意味で諦め。 ある意味で割り切っている。 現実と妄想の区別くらいつくさ。 素手で熊しとめる父。 その父を笑顔でボコボコにする母。 イケメンで頭も良く性格も良い。その上で父の超人パワーも受け継いでいる兄。 美少女で頭も良く性格も良い。武道に秀でた妹。 妄想と思われるだろうけど事実。そんな化け物が俺の家族。 そんな家族が居ればイヤでも自分の平凡さが分かる。 学力はどんなに勉強しても平均を超えるくらい。 運動能力も平均を超えるくらい。 武道は続かない。 動物は素手じゃ倒せない。 秀でていることと言えば広く浅くな俺の無意味な才能。 頑張らずともある程度の所まで至る才能。 頑張ってもある程度を越すことの出来ない才能。 居れば便利なクラスメイト。 ソレが俺の立ち居地。 家族に比べて劣っているこの感情を胸に、俺はクラスメイトのつまらないやり取りを耳にしながら。 俺は机に突っ伏して眠った。
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