1、ハヤシムラ

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彼女の身体はぴくりと跳ね、そのまま動かない。カミタはもう一度ぶつけようと身体を後ろに引いた。 だが直ぐに体制を解いた。アデコの苛立った声がしたのだ。 「あーもうっ。何なの毎朝毎朝。ハヤシは右側向いて寝るし、ハヤシの頭脂で身体べとべとになるし、ハヤシの頭臭いしっ」 怒鳴り散らす妹に相槌を打ちながらカミタは、自身を彼女の足下と地面の間に滑り込ませ、しなった定規のように一気に身体を起こした。 すると脂で地面に貼り付いていたアデコは「あ」と声を漏らし、ひょい、と立ち上がった。 「ほら、これで文句ないだろ。頼むから、朝から不機嫌なのは辞めてくれ。こっちまで苛々する」
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