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アデコは鼻を鳴らし、不機嫌そうに横を向いた。
「おい、いじけてないで早く背筋を伸ばせ。もう時間ないーー」
言いながら何気なく周囲に眼を流し、彼は絶句した。つむじ区の毛じいさんが、まだ眼を覚ましていなかったのだ。いまだに脂まみれの地面に突っ伏し、動く気配がない。
カミタは慌てて叫んだ。
「おじさんっ。早く起きてよ。時間ないっ」
彼と同じように他のものも叫んではいるが、おじさんは微動だにしない。
そのとき初めて、カミタは嫌な予感がした。
不安を掻き消すように脇のアデコを見た。しかし、彼女も彼と同じく、まさか、といった表情でつむじ区の方を見つめている。
カミタは意を決し、大きく息を吸った。
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