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カチカチ、カチ――
携帯電話のボタンを押すと大体こんな音が鳴るだろう。それはどの会社のどの機種も同じ様に作られており、近くに居れば直ぐに音が聞こえる程度の音量。
私以外にも携帯でメールや操作をしている人は居ても、やはり小説作業ともなれば字数を打つ回数が格段に上がる。
つまり、人よりも多くカチカチが鳴るという事。今思えばそれが原因だったのだろうか?
電車の椅子に座りながら作業する事五分程が経ち、何やらお隣から妙な気配を感じて目線を軽く動かしてみた。
「!?」
するとどうだろう、明らかに隣に座っていた人の目線は私が手に持つ携帯電話の画面を見ていたのである。
しかも〝ガン見〟……。
「えと………。」
私がお隣さんを見ている事も気付く様子はなく、ただただ携帯の画面に映る文字を読んでいる。それにしても――
人の携帯を覗き見ると言うのはどうなんだろうか?
そう思いながら、わざとらしくない様に軽く背伸びをするフリをして携帯を閉じた。
それから向かえ席のガラス張りを利用してお隣さんを見ると、お隣さんはガッカリしたような様子でこちらを見ていた……。
まるで……。
「何で閉じるんだよ!せっかく読んでたのに……」
とでも言いたげな顔をして。
いやいや、人の携帯覗き見する方こそどうかと思うよ~!!
なんて内心で思いながら目的の駅に丁度着いたので下車。お隣さんはと言うと、電車のドアが閉まり発車するまでの間、既に目を瞑って居眠りモードだった
「なんだったんだろう?」
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