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「うん」
素直にそう言うと、
リューはそこらへんにあったリンゴをヒョイッと投げてきた。
――パシッ
僕はそれを片手で受け取り、リンゴを見つめてリューを見つめる。
「今から作るからそれ食ってろ」
リューは素っ気なくそう言い渡すとTシャツの袖をひじまで捲り、手を洗いはじめた。
僕は再び美味しそうなリンゴを見つめて、
匂いを嗅いでから小さくかじりつく。
――シャリッ…
果物らしくみずみずしい食感が、口の中に広がる。
「……………………」
最初は警戒心を持ちながらゆっくりと味わうように食べていたが、
自然にそのスピードが上がってしまう
空腹だったのもあったが、
食べ物を自然のままで食べたのが初めてだった。
リンゴの知識は、生まれた時から頭の中にあった。
けど、食べるのはいつも料理されたやつだけ。
味付けもされていたし………………
リンゴ本来の味を食べたのは、これが人生初。
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