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「………………」
僕のしつこい訴えに負けたのか、リューは体を起こす。
そして傍にある椅子に掛かっていた黒いコートを、僕に投げてきた
――パサッ
僕はそれを片手で受け止め、コートを見てはリューを見る
ベットから立ち上がったリューも、僕が持ってるのと同じ様な黒いコートに腕を通していて………………………着ろということだろうか
でも正直、着たくない。
………僕はここに来てから、リューがくれた服を着ている。
普通に、ジーパンに半袖。
そう。半袖。
つまり、暑いとまではいかないが………ここは半袖でも普通に暖かい。
なのに、何でこれを着る必要がある?
意外と厚手なコートを片手で持ったままリューを見てみれば………………既に着ている。
……そういえば初めて031号室に来て。
リューが夕方、どこかからか帰ってきたあの時も……………コートを着ていた
「早く着ろ」
いつまで経ってもコートを着ない僕に、リューは『早く』という目線で急かす
けど僕はそんな目線を華麗にスルーし、胸の中にある疑問を声に出してみた。
「何で着るの?」
「外に行くからだ」
「外?」
「あぁ。」
そう言われて、ふと気付いた
僕って、外に出たことが無い
まぁ別に、だから外に出たいだなんて、微塵も思わないけど。
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