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「………………………。」
僕は冷めた目でリューの前に立ち、痛みに顔を伏せているリューを見つめる
心配とか、責任感とか、
そんなものは、一切沸いてこなかった。
変わりに沸いてきたのは、ただひたすら驚きばかり。
――――ポタポタッ
意外と深く噛みつかれたらしく血が止まらない肩を、僕は見る
そして正直。馬鹿じゃないかと思った。
「………………………」
だって
見ず知らずの僕を助けて、どうするの?
何も良いことなんて無い。
ただ、自分が怪我しただけじゃないか。
もしリューが獣に食べられそうだったとしても、僕はきっと助けない。
だって助ける意味が分からないし、理由もないんだから。
「…リュー……………」
………僕はそう言い
少しだけ…大部屋で死んだ隣の奴を思い出しながら、リューの前にしゃがみ込む。
伏せていた顔を上げたリューは、何だかぼんやりしてて
数秒僕の顔を見つめたら、血がついた手を僕の顔に伸ばしてきた。
「…………………エーチ……」
そしていつものリューには考えられないような、とても弱く柔らかい声で名前を呼ばれる
「…………よかった…。」
……………今にも泣き出しそうなくらいに弱々しく温かいその声に、僕は疑問だけが募っていった
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