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しばらくその『物』を見つめていると、隣に寝ていた奴の気配が薄れた。
動く気配も全くない。
チラッと見てみたら、『物』を握り締めながら死んでいた。
「……………………」
無言で視線を僕の『物』に戻し、再び見つめる。
……………みんな。気付くと死んでるな………
だからきっと、僕も気付いたら死んでいくんだろう。
勿論、その事に抵抗はない。
ここはそういう世界だから。
「……………………」
『物』をポケットにしまい、静かに目を閉じていく。
今日で、この部屋は最後か………………。
名残惜しい訳じゃないけど、単純にそう思った。
…………今日は6月2日。
……僕は6月2日に、繰り返しのこの世界を卒業したのか………。
これも特に意味はなく、単純にそう思った。
……睡魔にのまれる直前。
ちょっとだけ………………………本当に、ちょっとだけ……………。
隣で永遠に眠っている人の事が気になった。
けど直ぐに『どうでもいい』。という感情が出てきて、隣の奴への興味は消え去る。
「……………………」
………………ここはそういう世界なんだ。
僕らはそういう人間なんだ。
――ギュッ
僕は、何となく。
ポケットにある『物』を握り締めてから、眠りについた。
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