甘い隠し味

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「行きたいなら貰ってよ。そんで…」 誰かと行けばいいじゃん 大山は言い掛けた言葉を飲み込んだ 大山は自分に嘘をついていたことにようやく気付いた 「…素子さん、今度の日曜空いてる?」 「…そうだな。予定を空ける気になれば空けられる」 「ならいいや。無理に空けてもらうのも悪いし」 いつもだったらこう答えていただろう 「空けてくれないかな?」 「なぜだ?」 「一緒にドリームランド行かない?」 ようやく素子が振り返った 「…部長の頼みなら仕方ないな。付き合うよ」 素子の笑顔を見た瞬間、大山も自然と笑っていた 「なぁ部長」 「なに?」 「私が真実は隠した方がいいか聞いたのを覚えているか?」 「覚えているよ。オレは最終的にケースバイケースって答えた」 「部長は嘘をつける方が便利と言っていたが…やっばり私は性に合わない」 素子は床に置いてある自分のカバンに手を伸ばした 中から箱のような物を取り出す 「私の場合は嘘をついても良いことはないようだ」 それを大山に手渡す 「これはなに?」 「ただの気紛れ」 「チョコ?」 「さあな」 大山は最後のターゲット、黒木素子からチョコを受け取った 「そういえば…あの約束ってまだ有効かな?」 「あの約束?」 「観覧車」 「あー。…あれはもう期限切れだ。誘いがあれば別だがな」 「そっかそっか」 大山は嬉しそうに笑った 素子はそれを見て、本を手に取った ずっと読んでいたフリをしていた本にようやく目を通しはじめた
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