209人が本棚に入れています
本棚に追加
吉見は何も言わない
「だったらゲームだと知ってる人間に渡せばいい。なぜならその相手もゲームだと知ってるから。…とはいえ、これは理由として頼りない。一番の理由は他にある。お前にチョコが来る可能性は限りなくゼロに近い。刺客に渡したら負け。そもそも刺客を断定する必要はない。刺客の可能性があるもの全員に渡さなければいいだけなんだからな」
大山に先手を打たれたことにより、吉見の行動は全てゲームの一環として見られてしまった
頑張れば頑張る程に彼女達は離れていく
「あ、ちなみに素子さんには勝負を持ちかけてないからね。彼女がゲームに乗ってくれるとは思えない」
実は別な理由もいくつかあった
ただでさえ素子に迷惑をかけるこの勝負にこれ以上巻き込みたくなかった
そして、そのような形でチョコを受け取りたくなかった
それを敢えて吉見に語ることはなかった
「じゃんけんだって勝つべき時に勝たなきゃ意味がないだろ?時には1勝を得るために3敗する必要があるんだよ。お前も全勝狙いにいかずにいい加減、1人の女に絞った方がいいんじゃないかな。では約束の…」
大山は右手を出し、何かを催促する手振りを見せた
吉見は渋々とチケットを取り出し大山に渡した
「そのたくさんある甘いチョコで苦い思い出を中和するといいよ、色男さん」
大山はテーブルの伝票を持っていく
勝者の余裕だろう
吉見はしばらくその場から動けなかった
大山は部室に向かった
そこで最後の大勝負があるとも知らずに
最初のコメントを投稿しよう!