209人が本棚に入れています
本棚に追加
「素子さんは吉見にデートに誘われてどう思った?」
気付いたら言葉に出していた
素子から返事はない
他人が言ったかのような気分だったのも束の間、自分が出した言葉に戸惑いだす
「いや、あの、答えたくなかったらいいからね?」
「ドリームランドは魅力的だった。けど吉見と2人で行きたいとは思わない」
大山はホッとした
ただ何でホッとしたのかはよく分からない
「だから勝ってくれて良かったと思ってる」
「え?」
「自分で言うのもなんだが、どうせ私を賞品にでも賭けていたんだろ」
「それも上田から聞いたの?」
「これはただの勘だ」
「恐れ入りました」
「全く…勝手に人を賭けるな」
「ごめんごめん。…あ、そういえば…」
大山はポケットに入れていたチケットを取り出した
「はい、戦利品。お詫びにあげる」
素子はそれを受け取ると目を輝かせた
「ドリームランドのチケットか。…でもこれペアチケットだぞ?」
大山は立ち上がり、素子の後ろから覗き込むようにチケットを見た
「あら、本当だ。誰か誘って行くといいよ」
「…だったらいらない」
素子は手だけで後ろにいる大山にチケットを返した
「あれ?ドリームランド行きたくないの?」
「行きたい」
「じゃあ貰ってよ」
「行きたいけど貰いたくない」
素子は大山の方を一切見ない
最初のコメントを投稿しよう!