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『嫌いにはなれないよ…
でも浮気は嫌だな』
「…ごめんね、祐二」
ため息を吐いた。
どうやら俺の望む、
“もう二度としない”
って言葉はまだ出ないらしい。
『どうしたら辞めてくれる?
俺はこんなに綾だけを愛してるのに。
何か不満があるなら言って?』
その瞬間
俺の顔色を伺うような、
何かを探るようだった綾の目が、
鈍く光った気がした。
綾は“愛してる”って言葉に敏感。
「…本当に愛してる?」
『あぁ、愛してる』
「…あたしだけを?」
『うん。
本当に、綾だけを、愛してる』
綾の目が、変わってく。
「…本当の本当に?」
『本当の本当に!』
何回も繰り返し聞かれた。
まるで小さな子供みたいに
何度も本当?と聞いてきた。
浮気するのは
俺の愛を確かめるため?
…こんなことしなくても
本当なのに。
鈍い光が
綾の大きな瞳を完全に覆ったとき。
綾はニコッと
可愛いく笑って言った。
「本物の愛かぁ…
嬉しいな。
ねぇ、ゆうちゃん。
じゃあ…」
綾は甘えた時に
俺をゆうちゃんって呼ぶ。
“浮気は辞める”
じゃあ…の次に続く言葉を期待して、
俺も笑顔になった。
「…死んで?」
真夏の
茹だるような暑さのせいじゃない汗が溢れて
寒くて、体が震えた。
そういえば
綾の部屋は、いつも冷蔵庫の中みたいだ。
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